いわゆるブランドと名がつくお店で売られている革製品たちは、どれも美しい。キズひとつない。ピカピカしている。申し分ない。
これまではそれが普通だと思っていたのだが、革を扱い始めてから、「ん???」と思い始めた。
革はプラスチックやビニールと違い、どれひとつとして同じものがない。大きさ、厚さ、そしてキズ。キズは美しい。私たち人間にだって、どこかにキズがある。あるいはホクロとか。あるいはキズの治った跡とか。私の親指にも、すごく小さい頃に親に隠れてチョコレートを食べようとして、包丁で切ってしまった傷跡がある。何十年経っても消えない。それが生きている証である。
そう。革は生きてきた証。大事な動物たちが生きてきた証拠だ。革のキズや傷跡、シワなど、すべてが合わさって素晴らしい表情を作っている。
だが、革は「きれいな部分」だけ使われて、あとは捨てられる。使われないのだ。なんともったいないことよ。
キズの部分は美しいので、私はあえてその部分を活かして財布や小物を作っている。同じものがひとつとしてできないのが魅力である。この穴をどこに使おうかと、考えている時間がワクワクして好きだ。
人間も、動物も、キズのあったほうが魅力的でかっこいい。
またひとつ、キズのある革で作った薄い長財布ができあがる。仮接着をしてあるので、あとは穴をあけて周囲を縫う。そしてカシメを打つ。コバ(革の端の部分)を磨いて完成だ。